音響の天才

8月 4th, 2011

音響の天才の家

ツアーの終着地は、栃木県である。ダークな塗装の室内、バルコのCineMAX、ゴールドムンドのパワーアンプ、ミレニアム。荒井さんのホームシアターの画と汗を支えている構成コンポーネントを見たら、AVマニアだと思うだろう。しかし、荒井さんは、機器のオタクではなく単に自然な音が聴きたいだけという。映画、とりわけ『スター・ウォーズ』の大ファンである荒井さんは、築後12年になる自宅の大改装を機に、寝室をホームシアター専用ルームに変えた。どうせやるなら、自分の感性の城を作ろう、エピソードⅠのポッドレースなら、体感速度が300km、『グラディエーター』なら、戦場に居合わせているかのような息が上がる恐怖お現出させるのだと決めて、力業でそれを成し遂げる。

しかし、そこから第二章が始まる。荒木さんが作り上げたホームシアターは、予想しなかった未知のパフォーマンスを秘めていた。それまであまり聴くことのなかったクラシック音楽のCDをかけると、そのホームシアターには、吸い込まれるような深いステージと目くるめく高さが生まれ、音楽家の息遣いを招来した。荒井さんは、歌謡曲の歌手兼作曲を父として生まれ、音への感性は生来のものがあった。録音時、そこで起こったすべてが克明に描き出される表現域へ、彼の探求がいま続いている。